『夜逃げ』

正義と智は、以前直に絡んでいたチンピラと出くわしたが、突如現れた威厳のある侍・世良創(せら はじめ)が成敗した。実は、世良は、正義の育ての親の師匠だった。久々の再会に喜ぶが、世良からある依頼を頼まれる。世良が若松徹(わかまつ とおる)と知り合ったのだ。若松は元々暴力団・夜影組の末端だったが、やくざとしての生活に嫌気がさして、夜逃げをしたいので、力を貸して欲しいという。早速、若松の為に夜逃げの手伝いをするのだが、大人数では目立つので、旅一座のフリをして、駅まで連れて行く作戦を決行。しかし、その話を夜影組の組員が盗み聞きしていた。
 早速、旅一座のフリをして、夜逃げを開始する導光隊。しかし、そこで警察に扮装した夜影組に止められてしまう。正体を気づかれないように芸を披露するのだが、そこで若松の存在がバレてしまう。

深崎・『導光』
正義は大量の食材を抱えている。
正義「いや~、今日は店で安売りしてたから、食材を大量に買い込んじゃったよ」
智「そうだね…」
正義「これだけの量なら、今度、他の隊員にもおすそ分け出来そう…」
?「あー!」
正義と智が顔を見ると、第1話で登場したチンピラ2人(直に絡んでいた2人組)がいた。
チンピラA「(正義を指さし)お前は、この前の!」
正義、智「……」
正義「誰だ、お前ら?」
チンピラB「おい、何さらっと忘れてんだよ!」
正義「(少し考えて)…あー、思い出した。(指を差して)お前らこの前、直に嫌がらせしてた連中だ」
チンピラA「嫌がらせとは、何だ!」
チンピラB「せっかく良いところを邪魔しやがって、あの前の仕返しだ!」
チンピラB、木の棒で正義に殴りかかろうとする。その時、何者かが、チンピラBの手首を掴む。
チンピラ2人、後ろを振り返ると、世良創(せら はじめ、チンピラの様な服装)がいた。
世良「お前ら、見ず知らずの他人に、いきなり襲い掛かるとは良くないぜ」
チンピラA「見ず知らずじゃねぇよ!(正義を指差し)俺達は、この前、こいつらに酷い目に遭わされたんだぞ!」
世良「酷い目に?フン、どうせ女に手を出そうとした所を、懲らしめられた逆恨みだろ」
チンピラA「逆恨みだと!?貴様ー!」
怒ったチンピラAが世良に殴りかかろうとするが、世良はチンピラAの腹部に拳を入れる。
チンピラA「へぶぅっ!!
チンピラB「ちょっと、待て…俺は、(世良から首に手刀を入れられて)ぐはぁっ!!
チンピラ2人はそのまま気絶。
世良「フン、口で言っても分からねぇ奴には、これが一番だな」
正義「あ、ありがとうございます…って、世良さん!?」
智「世良さん…?
世良「正義、青瀬。久しぶり」
 
『導光』内
直「えぇっ!正義の兄弟子?!」
智「うん…正確には、正義君の育ての親の兄弟子なんだけど、僕も正義君も、この世良創さんって人に、色々とお世話になったんだよ…。他の隊員にも親切にしてくれた…」
直「そうなのか…。(緊張した様子で、世良にお辞儀をする)ど、どうも初めまして、桜庭直です」
世良「(割と親しげに)ははは、そんなにかしこまらなくて良いよ。ところで桜庭は、どうして導光隊に入ったんだ?」
直「えっと…私は依頼の代金を支払う代わりに、ここで働いているだけで…」
世良「(意外そうに)ほう、そうなのか」
正義「まぁ、直の言う通りですけど、それでもよく頑張っていますよ。(茶化して)これに加えて家事が出来たら、なお良いのだけど」
直「(恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にしながら)うるさい!」
世良「(笑いながら)まあまあ。ところで、正義。他の連中は、どうだ。皆、元気にやってるか?」
正義「はい。まぁ、なんだかんだで、皆、元気にやってますよ。(苦笑しながら)まぁ、約1名、面倒な奴がいますけど…」
世良「宇崎のことか。アイツは剣の腕はともかく、元気で良い奴だと思うけどな」
正義「元気って、あれは鬱陶しいだけですよ」
世良「そうか?ああいうのも、悪くないと思うけど」
正義「ところで、世良さん。何でこんな所に?」
世良「実は、今回君達の力を見込んで、ちょっと頼みたいことがあるんだけど、良い?」
 
世良の回想開始
世良「実は、先日、暴力団に襲われた男を助けた」
世良、暴力団の組員達(約5名)に襲われかけていた若松を助ける。
世良「助けた男の名は、若松徹と言って、彼は元々暴力団・夜影組の下っ端だったのだが、やくざとしての生活に嫌気がさして、組織から逃げ出してきたのだ」
若松、暴力団から逃げ出す。
世良「それを知った夜影組は、口封じに彼を始末しようと、彼を暗殺しようと迫っていたのだ」
夜影組、若松を始末しようと彼を狙う。
世良「今は、とある場所に身を隠しているが、今後どこで夜影組と遭遇するか分からないし、もし居場所が見つかったら、間違いなく殺されてしまう」
山の麓にある小さな一軒家を映す。
回想終了
 
『導光』客室
世良「そこでだ。若松の為にも、夜逃げの協力をして欲しいのだ。本当は、私だけで何とかしてやりたかったのだが、もうこの年だからな…。君達にも、力を貸してもらいたい」
正義「なるほど、分かりましたよ、師匠。その仕事、承知しました」
世良「そう言ってくれるとありがたいな。ところで、後で桜庭を呼んできてくれないか?彼女と2人で話がしたのだが良いかな?」
 
そして、連れて来られた直。直は、うーっ…と、緊張しており、若干ひるみ気味。
世良「導光隊の生活は楽しいか?」
直「(ぎこちないながらも、回答)楽しい…かどうかは、何とも言えませんけど、でも、悪くはないです」
世良「(安心して)そうか」
直「でも…」
世良、ここで「ん?」と表情を変える。
直「幾ら人助けの為とはいえお金や物を盗んだり、悪人相手とはいえ時に人の命を奪ったり…あの人達も悪い人ではないんですけど、彼らがやってる事が、良い事なのか悪い事なのか、今でもさっぱり分からないんです」
世良、直の言葉に頷く。
世良「君の気持ちも分かる。…でもな、ここの連中は、ここに来るまで色々とあったからな」
直「えっ…?」
世良「例えば、正義は、育ての親つまり俺の師匠を殺されていて、智も父親から虐待されていた。他の連中も、辛い過去があったんだ」
正義は育ての親の遺体を見て悲しむ場面。智は父親から鞭を打たれる場面を入れてほしい。
他の隊員も、心の闇を抱えている様子を感じさせてほしい。
世良「ここにいる連中は、今の社会に不満を抱えている。実際、時代が明治に変わった今でも生活に苦しんでいる人が大勢いる。彼らは、そんな人達を助ける為に、この活動をしていると言っても過言ではない」
直「……」
 
森羅寺
隊員達は、円を囲っている。
衛「つまり、今回は世良さんの頼みで、若松って人の夜逃げに協力するって訳?」
高志「でも、夜影組は、最近勢いづいている暴力団だぞ。大丈夫なのか?」
正義「そこなんだよな。それに、これだけの大人数だと、かえって怪しまれる。(人差し指を立てて)そこでだ。こんな作戦を立ててみた」
 
夜、旅一座のフリをした導光隊と若松。旗には、『世灯一座』と書かれている。彼らは、駅に向かって歩いている。
若松「すみませんねぇ、わざわざ手伝ってもらって」
正義「大丈夫、大丈夫、旅一座の格好をしていれば、誰も俺達だとは気付かないさ」
希望「でも、これだけ準備するのに結構苦労したわね。旗と衣装は、お古の着物を仕立てたものだし、小道具は近くの店で購入したし、武器は宰造サンの店の売れ残りだし」
宰造「おい、売れ残りとはなんや!」
拓「で、俺達はどうすれば良いの?」
正義「そうだな。もし、警察に呼び止められたら、旅一座だと名乗れ。そして、芸を見せろと言われたら、この前練習した通りにやれ」
その時、警察?が近づいて来る。
警察?「お前達、一体何者だ?」
正義「あぁ、俺達は旅一座の世灯(せとう)一座です」
警察?「(不審に)ほぅ、聞いた事がない名前だな」
正義「はい、俺達は、全国津々浦々回っている旅一座なんですよ」
警察?「なるほど、だったら試しに芸を見せてもらおうか」
正義「分かりました」
正義は、隊員達に目で合図を送る。隊員達は頷く。
隊員達は、劇を始める。寛心が語り手役。希望が三味線を弾く。
寛心「むかーしむかし、ある所に3人の旅人がいた」
旅人役の正義、衛、直が、登場。
寛心「ある日、旅人が山の中を歩いていると、突然鬼が現れた」
鬼のお面を被った拓、智、高志、勇気、宰造、若松が現れる。
拓「ハーッハッハッハッハ!キサマら、命が惜しければその荷物と金を全て置いていけ!」
寛心「しかし、旅人達は鬼の要求に屈せず、刀を抜いた」
正義達は刀を抜く。
正義「それは出来ねぇな。これは俺達の大事な荷物なんでな」
正義達は、鬼を次々と退治していき、鬼達は断末魔を挙げて、倒れていく。
そして、正義が若松を退治する。
若松「ぐはぁっ!
若松も、その場で倒れるが、その時、警察?が気付く。
警察?「ちょっと待て」
隊員達は、ぴたっと劇を止める。
警察?「その声は、まさか…!」
警察?、若松の鬼のお面を強引に剥がす。
警察?「あっ!お前は、若松!(導光隊を見て)という事は、キサマらは導光隊!」
直「えぇっ!? (何とか誤魔化す)い、いえ、私達は…」
警察?「隠そうとしても無駄だ。若松が導光隊に頼ると思って、こっちも事前に情報を集めたんだ。てめぇらの考えもお見通しなんだよ!」
正義「……(笑いながら)チェッ、バレちゃしょうがねぇな。けど、そういうお前も、本当は警察じゃあないよな。夜影組さん」
警察?「いかにも…」
警察?が変装を解くと、夜影組の暗殺班・班長だった。
班長「(若松に向かって)ったく、職を失くして路頭に迷っていた所を拾ってやったというのに。(若松に指を差して)お前は、せっかくの恩を仇で返す気か!」
若松「何が恩を仇で返すだ! 僕は、もうこれ以上、人を苦しめたくないんだ!
班長「貴様、夜影組を裏切る気か!」
正義「裏切りじゃないさ。コイツは、てめぇらの様な悪党と縁を切って、真っ当な人生を歩もうとしているだけだ」
班長、怒りのあまり、ブチっとキレる。
班長「お前ら、出て来ーい!!
暗殺班の組員が続々と現れる。
班長「(若松と導光隊を指差し)てめぇら、裏切者共々、斬り捨てろ!」
暗殺班、導光隊と若松に襲い掛かる。
希望は、簪をまとめて投げて、敵を一気に倒す。
宰造が、からくり箱の紐を引くと、散乱銃が発射される(第1話参照)。
衛、高くジャンプして、上から敵を刺す。
寛心は、若松を護衛しながら、杖で敵を突いて倒していく。
直、敵を峰打ちで倒していく。
勇気が敵から逃げている所を、拓が後ろから片手ずつ、それぞれ敵の頭を掴み、2人の頭をガン!とぶつけて気絶させる。
智、敵2人を早撃ちで退治する。
高志は敵の腹部に拳を入れて気絶させる。更に、ジャンプして、別の敵の頭を蹴って倒す。
敵が倒れ続け、残った班長は、正義を斬りつけようとするが、正義が先に班長を斬る。
班長「うああっ…」
班長は、その場にぐらりと倒れた。
正義「(刀を鞘に収め)任務完了」
その時、パチパチパチパチと拍手の音がする。隊員達が振り向くと、世良が登場した。
世良「見事だったぜ、正義」
正義「世良さん!」
直「世良さん?!」
世良「遠くから君達の様子を見物していたけど、やり遂げてくれたな」
正義「いるんだったら、助けてくださいよ」
世良「ハハハ、ごめんごめん。まぁ、もし危険が迫った時には、助けようと思っていたがな。でも、自分達の力で解決させた事だし、合格ってことにしとくよ。あとは俺が本物の警察に伝えるから安心しろ」
直、世良の着物の右の裾が切れている事に気付く。
直「あ、世良さん、着物の裾が…」
世良「えっ?」
世良、直に指摘されて切れた裾を見る。
世良「(何とか誤魔化す)…あぁ、これは裾が枝に引っかかっただけだ」
直、世良の様子をおかしく思う。
 
駅のホーム
若松「皆さん、ありがとうございます。これで足を洗って一からやり直す事が出来ます」
正義「今度は、道を踏み外すなよ」
若松「分かっています。皆さんも、お元気で」
若松は汽車に乗る。汽車はピーッ!と汽笛を上げた後、発車した。導光隊は若松を見送った。
 
翌日
新聞に、『導光隊、夜影組を壊滅』という記事が掲載され、暗殺犯も成敗された話も書かれている。
『須藤屋』店内
成子「(新聞を見ながら)うわー!遂に夜影組が成敗されたんかー。やっぱ導光隊は、凄いなー。にしても…」
 
成子「この前、店に来た怖いおっちゃん、『導光隊について、出来る限り詳しく話してくれ』って言うとったけど、何するつもりやったんやろうなぁ?」 
回想:怖いおっちゃん(夜影組の組員)が成子を尋ねる。
 
しかし、成子はニヤリと笑い、
成子「でも、(懐から札束を取り出し)おかげで、こんだけ大金が手に入ったことやし、まぁ、ええか!(笑)」
 
『導光』前
世良「これで、若松は夜影組から逃れることが出来たな」
正義「あぁ、若松も新しい場所で、一からやり直すことが出来るだろう」
世良「お前も元気でな」
正義「世良さんも、お元気で」
世良「あぁ、じゃあな」
世良、去る。
智「行っちゃったね
正義「そうだな。でも、またどこかで会えるだろう」
直「若松さんって人、新しい所で、上手くやっていけるのだろうか?」
正義「さあな。でも…」
正義は、青空を見上げて言った。
正義「何とかなるだろう」