第5色

◯シブキカフェ・中(夕)
  ハンカチを口にあてて幸せそうな顔
  の紗子。
  不機嫌そうな夏奈。
  店の中に客とカウンター内に髭の生
  えた紺野誠(45)がグラスを拭いてい
  る。

紗子「聞く~?」
夏奈「散々聞いた!電話で!」
紗子「何をプリプリしてるの?プリプ
  リ姫~」
夏奈「...あのね、紗子がここに来なけ
  れば夜までゆうちゃ...」

  咳払いをする夏奈。
  紺野の手が止まる。
  ニヤニヤする紗子。

紗子「ゆうちゃ?」

  カウンターから出て、紗子を連れて
  テーブルに向かう夏奈。
  
紗子「(小声)まだ言ってないの?」
夏奈「(小声)言えるわけないでしょ」
紗子「(小声)知ったら無表情で泣きそう」
夏奈「絶対にバラなさいでね!」
  
  グラスを拭き夏奈の後ろにいる
  紺野。

紺野「興味深い話だね」

  背筋を伸ばす夏奈。

夏奈「さてと仕事、仕事」

  カウンターに戻る夏奈。

紗子「まだまだ青いな」
紺野「あっそうそう、涼子さんから荷
  物預かっているんだ」
紗子「荷物?」
紺野「夏奈、そこの段ボール持ってき
  て」

  重そうに段ボールを持ってくる夏奈
  テーブルに置く。 
  不思議そうに段ボールを開けると野
  菜、ジップロックが入っている。

紺野「どーせ、今日もここにいるだ
  ろうから口だけじゃなく、手を動
  かせとの事」
紗子「さすが氷結女。冷酷だ」

  携帯電話が鳴る。
  携帯を取り出す紗子。
  「氷結女 涼子 よろしくね」の表示
  立ち上がる紗子。

紗子「タイミング良すぎでしょ」

  辺りを見渡す紗子。


◯紗子家・全景(夜) 
  紗子の家の前から車が走り出す。

◯同・玄関(夜)
  段ボールを持ままドアを開ける紗子
  
紗子「ただいま。...静かだ」

  靴を脱ぎ歩く紗子。

◯同・厨房(夜)
  調理台で眠っている涼子。
  調理台に「新メニュー」と書かれた
  紙。
  段ボールを持ち、入ってくる紗子。

紗子「また、こんな所で。風邪引くよ!」

  調理台に段ボールを置く紗子。
  無反応の涼子。

紗子「もっと誰かに甘えればいいのに」
  
  調理台の引き出しを開ける紗子。 
  くしゃくしゃの写真がある。
  手に持ち写真をひっくり返すと紗
  子(7)を抱えた二宮晴希(33)、笑顔
  の涼子が店前にいる。

紗子「もっとメイクして、もっとお洒
  落れしなよ。自分の人生なんだから」

  涼子を見る紗子。
  紙を持ち上げると「新メニュー」以
  外書かれていない。

紗子「無理すんな。氷結女」
涼子「(寝言)誰が氷結女だ!」

  フッと笑う紗子。
  ポケットから飴を取り出し、紙と    
  一緒に置く紗子。

紗子「いつか溶けるといいね」

  幸せそうに眠っている涼子。