出会い


「今日は石に自分の属性魔法を入れる方法を教えます──」

ここはヴィオル魔法学校。

魔法能力を持った者が学ぶ場所。

私ルリ=カトレットもその一人だ。

「このように自分の得意な属性魔法を石に吸収させて下さい」

前から緑色の石がみんなに配られる。

こんなの渡されても…。

「では出来た人から名前のラベルを貼って提出して下さい」

私と石のにらめっこが始まった。

 

 

10分後。

「おい、属なし」

嫌な声が後ろから聞こえる。

「見ろよ。まだそのまんまだぜ!それで出す気か?」

いつも何かと嫌みばかり言ってくる奴らだ。

「まぁ、せいぜい精進することだな」

そう言ってわざと大きな声で先生に石を提出しにいく。

魔法の種類は大きく分けて2つある。

基本となる基礎魔法と成長するにつれて身につく属性魔法だ。

普通なら属性の一つや二つ持っていておかしくないのだが…。

どういうわけか、私にはまだ属性がない

なぜこうも上手く行かないのだろか…。

「やっぱりこのまま出すしかないか…」

私はため息をついてラベルを石に貼って提出した。

 

 

「カトレットさん」

授業が終わると案の定先生に呼び止められた。

属性魔法を教えてくれているのはミセル先生。

若い女性の先生だ。

「まだ属性は見つからないの?」

「はい…」

「急ぐ必要はないけど進学するほど大変になるから…」

「わかっています」

努力して得られるのならとっくに得ている。

属性の習得は人それぞれ。

自分に何が足りないのか分からない。

「困ったわね~。今日の授業をみてリストに載せようと思ったんだけど…」

「リスト?」

「明日から4日間パートナーを探しに実技学校の生徒が来ることになっているの。そのためのリストよ」

「こんな小さな学校にパートナーを?」

「まぁ…確かに小さいけど…。だからこそよ。才能ある魔法使いが埋もれない為にもこういったことは必要なの。はい、先にあげるわ」

渡されたのは明日から4日間の予定表。

あまり私には関係なさそうだな…。

「まぁ授業風景を見るだけだから特別なことはないけどね」

―キーンコーンカーンコーン…

「!」

「やばっ!!

次の授業の始まりのチャイムだ。

「すみませんっ!!失礼します!!

私はダッシュで教室を後にした。

「…いつこの石は色づくのかしら……」

 

 

―――――――――――

 

着いたばかりのヴィオルの町並みを一番高い建物の屋上から一望する。

―バァンッ!!

突然ドアをあけ破る音が鳴り響いた。

見つかったか…。

「こんな所にいたんですか!?

捜査係のロゼだ。

2つ下の学年の優等生で会議に出席しない奴らを探し回る役職を与えられている。

「お戻りください、ライル様。明日のことについて会議が始まります」

「分かった。自分で行くから先に戻っていいぞ」

素直に行ってなんかやらない。

せっかく知らない土地に来たのにくだらない会議に時間を割くのはもったいない。

「そうは行きませんっ!!それで何度逃げられた事か…。私と一緒に来てもらいます!!

「断る」

そう言ってもう一度町並みを見渡した。

「髪が乱れてますよ。せっかく綺麗な銀髪ストレートなんですから」

ロゼの伸びてきた手を俺は阻止した。

「触るな」

「すみません……」

人に触られるのは好きじゃない。

しばらく沈黙が続く。

「あのっ…!ライル様はなぜパートナーを作らないのですか?」

「……」

何か察したのかロゼははっと手で口を押さえた。

「すっ…すみません。失礼します。ちゃんと会議には出席してくださいね」

「……」

ロゼがいなくなったと思った矢先に入れ替わりで誰かがやって来る。

「あーあ。また眉間にしわが寄ってる。その顔やめたほうが良いよ?」

「!」

いつの間にか奴は目の前にいた。

黄緑色の髪を風になびかせて悪戯を思いついた子供のように緑色の目で笑う。

こいつロゼが居なくなるのを待ってたな。

「あーやだやだ。これだから頭の堅い人は」

俺が怒ると分かってやっているからよけいにむかつく。

「エリオル!!!今までどこに行ってたんだ!!どれだけ待ったと思ってる!」

奴の胸ぐらを掴み、ありったけの文句をぶつける。

こいつが待っていろと言うからずっとここにいたのだ。

ロゼには見つかるし最悪だ。

「ごめんごめん」

「ごめんですむかっ!!

「まぁ落ち着いてよ。面白そうな場所を見つけたんだ。行ってみない?」

エリオルは町の地図を広げて俺に見せびらかす。

「それとも会議に出席する?ライル様」

どうせ会議の内容は今後の日程についてだ。

俺がいなくても問題ない。

誰があんな面倒くさいもの進んで出席するものか。

「分かってるくせに…」

「そうこなくっちゃ」

俺は渋々エリオルについていった。

 

 

―――――――――――

 

―カランッ…

「いらっしゃいませ!!

一人暮らしの私は学校が終わるとレストランでバイトだ。

注文を聞いて料理を運ぶだけの仕事だが、町の人と話しができるから楽しくやっている。

「頑張ってるみたいね」

「マリさん!!

「ルリちゃんいつもご苦労様。助かるわ」

この人は店長のマリさん。

笑顔が素敵でとても温かい人だ。

「こちらこそいつもありがとうございます」

「そろそろ他のバイトの子が来るから帰っていいわよ」

「はい」

私が働くのは他のバイトの人が来るまでの間だけだが、仕事を与えてくれることに感謝している。

「そうそう、残った食材いつもの所に置いてあるから持って帰っていいわよ。今日はちょっと重いから気をつけて」

「ありがとうございます」

マリさんにはよくしてもらってばかりだ。

私もあんな人になれたらな…。

夕飯の献立を考えながらぶらぶらと歩く。

今日の晩ご飯はカレーにしよう。

そんなことを考えている間に森の入り口に辿り着いた。

私の家は森の中にあるのだ。

―サァァァ……

「?」

何故だかいつもより木々が騒がしい。

「!」

誰かいるっ……!!

私は荷物を置いて急いで森に入った。

 

 

―――――――――――

 

「おかしいなぁ…。めちゃくちゃ広い森だって言うから何かあると思ったのに…」

エリオルに付き合わされて森に来てから早一時間。

奴の言う何かはいまだに発見出来ていない。

「誰かさんが面白いもの見れるって言うから付いてきたんだぞ」

「悪かったって!!

―フワッ

突然何かの気配を感じた。

俺たちを狙った何かがこちらに向かって来ている。

「ねぇ、ライル…」

「あぁ」

エリオルは目をとじ、耳に神経を集中させた。

「足音は軽い。速度もそれなりに速いしピンポイントでこっちに向かってくる」

目を開き一拍置いて正体を突き止める。

「動物じゃない。人間だ」

どういう人物かわからない以上、下手なことは出来ない。

「俺は何もしないぞ」

ただでさえもう辺りは暗いのにこんなところまで来て無駄な体力は使いたくない。

「えぇ~!?ライルの薄情もの!

「なんとでも言え。ほら、来たぞ。どうするんだ?」

もう足音はすぐそこまで来ている。

「そりゃぁもちろん…」

―ブンッ!!

エリオルは手から剣を出して振り下ろす。

「丁重にお相手しないとねっ!!

そう言った瞬間、木々から突然人が現れて殴りかかってきた。

エリオルは拳を剣で受け止める。

「へぇ…女の子だったとはね。なかなかやるじゃん?」

「!」

暗闇で彼女の緑色の目がきらりと光った。

目と同じ色の長い髪を青い飾りのついた髪ゴムで2つに縛り、攻撃的な目で俺たちを見ている。

俺たちとそう歳は変わらないだろう。

彼女は腕をばねに後ろに下がると、体勢を立て直して俺たちを睨みつけた。

「私はこの森を管理する者です。森を荒らすようなら容赦しませんっ!

「「……」」

「ライル」

「完全に誤解されてるな」

人が管理している森だから町の人間が近づかないのか…。

ようやく謎が解けた。

「……誤解?」

「あぁ…。俺たち、今日初めてこの町に来たんだ。2人で散歩しててここに来たのは偶然なんだよ」

「本当に?」

エリオルは必死に説明するが、彼女はまだ疑いの目で俺たちをじっと見ている。

仕方ない、参戦してやるか…。

「俺たちは明日から魔法学校を訪問するために実技学校から来たんだ」

俺は学生証を彼女に見せた。

まじまじと学生証と俺を見比べると納得したようで頷いている。

「……わかりました。あなた方を信じます。でも…」

「でも?」

「今から宿に戻ったら朝になっちゃいますよ?」

「「……」」

「エ~リ~オ~ル~~!!

結局エリオルに振り回されただけだった。

怒りがおさまらない。

「いつも以上に怒ってるね…」

「当たり前だろ!どーしてくれるんだ?」

魔法学校に見学に行くのは明日からだというのに別行動したあげく野宿だなんて笑えない。

そういえばこいつ、ここが面白そうだと思った理由を言わなかったな。

町人が近づかない場所だって知っていれば来たりしなかった。

こんなことなら会議に出ておくんだった。

「まっ…待てって!取りあえず落ち着いて考えよう!!

「問答無用。一遍死んで来いっ!

思わず剣を取り出してエリオルに刃先を向ける。

こいつにはいつも振り回されているが、ここまでひどいのは今回が初めてだ。

「俺が死んでもどーにもなんないでしょっ!!うわっ!剣を出すなって!

「あの~…」

何か聞こえたか…?

「そうだな。お前ごときに武器を使う必要もなかったな」

エリオルも実力はあるが、今なら勢いでいける。

「そういう意味じゃないよ!!!

「あのっ!!

彼女の声がはっきりと聞こえて俺は手を止めた。

つい怒りに身を任せてしまった。

「もしよかったら…私の家に来ませんか?」

「えっ?」