人を導く光

女侍・桜庭直は、チンピラに絡まれている所を、通りすがりの侍・明槻正義に救われる。直がこの街に来た理由、辻斬りの真犯人を探す事。実は、彼女の父親は辻斬りの濡れ衣を着せられて処刑され、母親もそれを苦に娘と共に無理心中を図り、直だけが生き残ったのだ。それを知った正義は、彼女の依頼を受けようとする。正義の職業は、萬屋であり、依頼された事は、基本的に何でも引き受ける事がモットーだが、真面目で勝気な直はそれを断った。
一方、ヤクザの組長にして真犯人・山口将生。彼は直の父の元で、剣術の手解きを受けていたが、些細な事で母親と口論となり彼女を斬り殺して快楽を得た事を機に辻斬りとして直の父から教わった剣術で、人を斬り続けていた(直の父が誤認逮捕された事もこれに起因する)。直の父が濡れ衣を着せられた事を機に、山口はいつか自分にも警備隊の手が及ぶ事を予見して、他の街へ引越したのだ。その後、実力の高さをやくざの一味に買われ、山口は今では組長にまでのし上がったのである。山口は、濡れ衣を着せた侍の娘がこの街に来たという噂を聞きつけ、彼女を殺そうとする。
一方、直は1人で真犯人を捜すが、途中で山口将生が集う暴力団が集まってくる。
殺されそうになる直だが、直の事が心配になって後を付いてきた正義によって助けられる。正義から「今のお前では戦えない」「助けが欲しいなら言え」と説得され、直は正義に助けを求める。そして、正義は仲間を呼び寄せ、山口及び組員達を倒してしまう。
謎の集団登場に唖然とする直。彼らは今の社会に不満を抱える者達の集まりだと正義は語る。
正義は、直の剣術の腕を見込まれて、彼女をスカウトするが、彼の淫らな態度に、直は怒ってそのまま立ち去ってしまった。

大政奉還に伴い、幕府による支配が終わり、人々は新しい時代に希望を寄せていた。
しかし、現実は一向に変わらなかった。政府による圧政、行き詰まった貧困、かつての身分による差別、不当な事件等―――未だに苦しみは続いていた。
 
人通りの少ない所で、チンピラに絡まれる直。
チンピラA「へっへっへ…可愛い嬢ちゃんじゃねぇか」
直「離せ、私はお前らの様な下衆を相手にする気は無い」
チンピラB「(カチンと来て)んだとぉ、コラァ!!
チンピラA「この俺に喧嘩を売るとは、大した女だな。俺らを怒らすとどうなるか、思い知らせてやる」
その時、何者かがチンピラAに小石をぶつける。
チンピラA「痛ぇっ!(後ろを振り返り)誰だぁ、俺に石投げた奴ァ」
正義、登場。
正義「(笑いながら)いやぁ、すみませんねぇ。けど、こんな可愛い女の子を相手に喧嘩を売るなんて、良い男がするもんじゃねぇぜと思って、つい…」
チンピラB「うるせぇ!! 第一、喧嘩を吹っかけてきたのは、この女の方だぞ」
正義「へぇ~。けど、女の子を殴ろうとするのは、感心出来ないなぁ」
チンピラB「黙れー!!
チンピラBは正義に殴りかかるが、かわされて、正義はチンピラBの顔面を殴る。
チンピラB「ガッ…」
チンピラB、そのまま倒れる。
正義「フン、女の子に乱暴をする奴には、お灸を据えないとな」
チンピラA「くそっ、覚えてろよ!」
チンピラA、チンピラBを背負って逃げる。
正義「けっ、おとといきやがれってんだ!
直「それに、あれくらい私一人でも戦える」
正義「へぇ、そりゃあ余計な手出しをしたな。(直の顔をジロジロ見て)それにしても、お前よく見ると可愛いな。さっきのチンピラどもが気に入るだけの魅力はある…」
正義、直の顔に触ろうとするが、直に思い切り平手打ちをされる。
正義「って痛っ!!
直「何をするんだ、この変態!
正義「ちょっと顔に触ろうとしただけじゃねぇかよ。それに俺の名前は『変態』じゃねぇ。
正義、親指で自分の顔を指して笑みを浮かべ
正義「明槻正義。これが俺の名前だ」
正義「そういうお前は?」
直「…桜庭直」
正義「へぇ、じゃあ直ちゃん、とでも呼ぼうかな?」
直「呼び捨てで良い」
正義「分かった。ところで、直。ここじゃ見かけない顔だけど」
直「あぁ、私は今ある人物を探して旅をしているのだ」
正義「旅? 誰を」
直「……父を殺した辻斬り」
正義「辻斬り?」
直「あぁ、私の父は、正義感が強く、心優しい武士で、私や剣術道場の子供達に剣術を教えていた。ところが3年前、街に辻斬りが現れて、死人が出た。その辻斬りの使う剣術が父のものと同じだったという理由で、私の父が捕らえられた。もちろん、私達家族は、父は無実だと懸命に訴えたが、全く聞き入れてもらえなかった。そして1ヶ月後、父は処刑されてしまった。そして、私と母は辻斬りの家族と蔑まれ、それに耐えられなった母は……」
 
回想場面。直の母、直と共に無理心中を図る。
直「そして、私だけが生き残った」
回想終了
 
正義「……」
直「それ以来、私は父に濡れ衣を着せ、母を死に追いやった辻斬りを捜す旅に出た。そんなある日、宿屋で旅の者から、こんな話を聞いた。
 
回想場面
宿屋
旅人「数年前から、深崎の方で政府の重役と家来の不審死や、大富豪の家から大金が盗まれる事件が相次いでいるらしいぜ」
回想終了
 
直「もしかすると、そこに辻斬りがいるんじゃないかと思って、ここに来た」
正義「……なるほどねぇ、それじゃあ、俺が力になってやるか」
直「どういう事だ?」
正義「実は俺、万屋をやっているんだ」
直「万屋?」
正義「万屋『導光(どうこう)』。導く光と書いて、導光。万屋というのは、つまりはお客さんから頼まれた事は何でも引き受ける店だ。具体的には、家事手伝いや大工の手伝い、庭の手入れ、犬の散歩といった雑用から、失せ物探しとか浮気調査、事件の調査、はたまた夜逃げの手伝いや荒事の揉み消しといった、ちょっと危ない仕事まで、ありとあらゆる事をやってるぜ。どうだい、ちょっとウチの店によっていかないか?」
直「……断る」
正義「えっ、何で?」
直「私は自分で片を付けたい。これはあくまで私だけの問題だからな。それに、お前の話は、胡散臭くて信用ならない」
正義「(あっさりと)ありゃりゃ、それは残念。ま、もし気が変わったら、万屋『導光』まで」
そう言うと、正義は去っていくが、去り際に一言。
正義「あ、あと余計なお節介ながら、1つ忠告しておこう。あまり1人で抱え込みすぎるのは良くないぞ」
 
万屋『導光』 
正義「チェッ、せっかく、手を差し伸べてあげようかと思ったけど、断られちまったよ」
智(現在、目は前髪で隠れている)「怪しいと思われたんじゃないの……?」
正義「るせぇ!にしても、その辻斬りの存在も気になるんだよな」
智「ねぇ、その辻斬りって、もしかして、僕達の活動が変な形で伝わっているんじゃ……」
正義「まさか!ウチは無益な殺生はしない主義だ!間違ってもそんな真似はしねぇ!」
智「そ、そうだよね……僕達はあくまで人助けの為にやってるんだよね」
正義「それに、あの事件は深崎でない所で起きたんだ。ったく、あっちこっちで物騒な事件が起きちゃって、世も末だな。あの子、1人で探すとは言ってたけど、やっぱり放っておけないなぁ……(少し考えて)よし!
 
ヤクザ一味のアジト
山口「何? 辻斬りの娘がここに来ているだと?」
末端員A「はい、噂によりますと、父に濡れ衣を着せた真犯人を探しているとか」
山口「(小声で独り言)チッ、せっかく下町から逃げてきたっつーのに、予想外だぜ。もし、アイツに見つかったら、マズイ事になるな。(末端員に向かって)お前ら、ちと頼みたい事があるんだが……」
 
夜、帰り道を歩く直。
直「はぁ、街の人達から色々と聞き込みをしてみたが、今日も収穫は得られなかったか…」
がっくりと肩を落とす直。
その時、覆面達(約5名)が直の周りに集まってくる。
直「(冷静に)一体何者だ、お前達は?」
覆面「お前に、名を名乗る必要は無い」
覆面達は、直に斬りかかるが、直はそれらを峰打ちで打ち据える。
覆面「ほぅ、なかなかやるな」
直「この程度のことなら、普段から鍛えているのでな」
覆面「そうか、だったらこれならどうだ?」
直「何?」
大勢の覆面達が現れて来るが、それでも直は覆面達と渡り合う。
ところが、手裏剣が飛んできて直の肩を切る。
直「くっ!
覆面「隙あり!!
覆面が直に斬りかかるが、直は即座に刀を交えるが、直の刀が折れてしまう。
直「あぁっ!」
山口「ほほぅ、傷を負ってもなお、戦おうとするのは大した根性だな。だが、刀は折れてはもう戦えまい」
覆面を被った大男・山口将生が現れる。
山口「お前が、辻斬りの娘か」
直「お前、父を知っているのか?!
山口「いかにも、俺の名前は山口将生。お前の父親には世話になったな」
山口が覆面を外す。
山口「初めて人を斬った相手はお袋だったな。些細な事で口論となって、あんまりにも口うるさいから、斬り殺した。その時だ。俺は今までに感じたことのない快感を得た。以来、俺はその快感を求めて辻斬りとしてお前の父から教わった剣術で、人を斬り続けていた。(嘲笑しながら)警察官もバカだよなぁ。同じ剣術を使うからって、全くの別人を捕まえてよぉ。ま、そこはお前の親父に感謝してるけどな。そして、いつか自分にも警察官の手が及ぶと考えた俺は、他の街へ引越した。そこで、通りかかった当時の組長様に実力を買われて、あっという間に成り上がって、今じゃ300人もの組員をまとめる組長さ」
直「という事は、お前が父を……!
山口「いかにも。後から風の噂で、そのカミさんと子供が心中をしたという話を聞いたが、まさかその子供であるお前が生き残っていたとはな……」
直「父は、人を殺す為に剣術を教えたのではない!!
山口「フン、生意気な口を叩くのはこれまでだ。今からこの俺がお前を両親のいるあの世に連れて行ってやるよ!!
山口が刀をふり下ろそうとした瞬間、どこからともなく、小石が飛んできて、山口の頭に当たる。
山口「痛っ!! 誰だ、この俺に石をぶつけた奴は!!
正義、どこからともなく登場。
正義「悪いな。石投げして遊んでいたら、当たっちまったよ」
直「正義! 何故お前がここに?!
正義「まぁまぁ、細かい事は気にしないで。にしても、あれだけの人数を1人で始末しようとするなんて無茶しやがるぜ。前に言っただろ。無茶はするなって。(山口に向かって)ところで、お前か。直の親父さんに辻斬りの濡れ衣を着せたのは」
山口「濡れ衣を着せたとは、失礼だな。馬鹿な警察官がコイツの父親を辻斬りと勘違いしただけだ」
正義「でも、こんな大勢で女の子1人をやっつけるのは、良い男がするもんじゃねぇな。(直に向かって)さぁて、助けが欲しいか? それとも、また1人で戦い続けるのか?」
直「(悔しさを見せつつも)……お願いだ、正義、助けて!!
正義「(にんまりと笑みを浮かべ)承知した!」 
正義の台詞と共にどこからともなく、正義の仲間が現れる。
山口「何だ? 仲間がいるのか?」
勇気「その通り!」
山口「誰だ、お前は?!」
勇気「可愛い女の子を大勢で斬りかかるとは言語道断!雷光の刃・宇崎勇気がてめぇらを叩き斬る!!
組員A「んだと、コラァ!
と、組員Aが睨むと
組員B「うあぁっ…」
組員Bが倒れる。彼の首元には、簪が刺さっている。
組員A「何で首に簪が?…って、うがぁっ!!
突如現れた高志に頭を踏みつけられた上に腹部を強く蹴られ、組員Aも倒れる。
高志「チッ、また暴力女に先越されたか」
希望「誰が暴力女だって?ちっこい癖に、生意気な口を叩くんじゃないわよ」
高志「るせぇ! 俺だって、やれるんだぞ!!
と互いに喧嘩しつつ、希望も高志も組員を次々と倒していく。その様子を見る直。
直「何だ、あの人達は?」
直の背後から、寛心が現れる。
寛心「僕達は、君を助けに来たんだよ。さぁ、今のうちにこっちへ」
寛心、直を安全な所に逃そうとする。
組員C「おっと、そうはさせないぜ」
組員C2人の前に立ちふさがり、襲いかかる。
直「!」
寛心は、杖で組員Cの胸を強く突く。
組員C「うっ!」
組員C、倒れる。
一方、別の組員が手裏剣で組員と戦っている正義を狙うが、木の影に潜んでいた智の銃で撃たれる。
勇気も他の組員と戦おうとしている。
勇気「おぅ、お前ら! 雷光の刃・宇崎勇気相手に、怯えてるんじゃねぇか?」
組員D「んだとコラァ!
キレた組員D達が襲いかかる。
勇気「うおーーー!!
勇気も組員D達を襲いかかるが、刀を弾き飛ばされてしまう。
勇気「……あ。ちょ、ちょっと待って、今回は、たまたま調子が悪かっただけで……」
組員D達は勇気の言葉を聞かずに斬りかかる。
勇気「ひぃぃぃぃっ!
勇気、ビビって逃げ出す。
組員D「待ちやがれ!
そこに拓が現れ、組員Dを空へ蹴り飛ばす。
拓「うおおおおおっ!!
拓、その後も己の素手で組員達を投げ飛ばす。
組員E「何なんだ、あの男?素手で人を空へ放り投げて…?」 
宰造「おい、今驚いている暇ちゃうやろ」
組員E「何?」
宰造「くらえ!!
宰造がボタンを押すと、からくり箱から散乱銃のごとく弾が連射される。
ダダダダダ…
組員達「うわぁっ!!
銃の攻撃を受ける組員E達。
組員F「くそ、一旦退却を…」
衛「おっと、そう簡単に逃がす訳にはいかないぜ」
組員F「何?!」
衛、槍を振り回して、竜巻を起こす。
ビュオオオオッ‼‼
衛「おりゃああああああっ!
組員F達を吹き飛ばす。
山口「お、己ー!!
1人残された山口、正義に斬りかかるが、正義がジャンプでかわし、山口を斬る。
山口「うあああっ……」
山口は倒れる。
正義、刀を鞘に収めて
正義「依頼完了」
敵が全滅して、突如現れた謎の集団に唖然とする直。
直「な、な、何なんだ、この人達はーーーーー!!
正義「なに、困った人を放っておけない連中の集まりさ。これで、お前の親父さんも安心して成仏出来るだろうよ。それと、お前大事な一言を忘れてないか?」
直「えっ……(照れ隠しで)あ、ありがとう……」
正義「どういたしまして。それにしてもお前、先程の戦いを見る限りだと、そこそこ強いんだな。どうだ、お代の代わりと言っちゃあなんだけど、これから俺の店で働かないか?」
直「えっ、私がか?」
衛「あーっ、また隊長の悪癖だ」
正義「いいの。(ニヤニヤしながら)ウチの店って男2人しかいなくってさー。そろそろ、可愛い女の子が来て欲しいなーって、思っていたのよ。客寄せにもなるし、毎日お世話してもらえるし、あわよくば…」
ピシィッ!
直、正義の頬に平手打ち。
正義「痛ってぇーっ!!  何で、ぶつんだよー」
直「当たり前だ! こんな好き者の所にいたら、何をされるか分からない!
直、そのまま立ち去る。
正義「おーい、そんな冷たい事言うなよ~」
正義、直を追いかける。
寛心「あーあ、結局こうなっちゃうんだ」
希望「ホント、懲りないねぇ」
智「あっ、お代はどうするの……?」