可能性

早速、『導光』に依頼が来た。今回の依頼主は、米原秋人(まいばら あきひと)。彼は、庄屋『米原屋』を経営していたが、常連客・田島(実は松下の手下)から、「どうしてもお金が必要になったが、頼れる人が貴方しかいない。店を担保に保証人になって欲しい」と頼まれた。米原は田島に言われるがまま、お金を借りてそれを田島に渡したが、彼はそのまま姿を消し、担保にした店も金貸し屋に差し押さえられたという。
店と全財産を失ってしまったので、取り戻して欲しいという内容だった。
情報屋・真田によると、最近急速に成り上がった資産家(高等遊民)・松下健二(まつした けんじ)が怪しいという。正義と直は、早速松下の屋敷に忍び込む為、使用人として雇われる。
仕事をこなしつつ、松下の詐欺の証拠を調べる。更に、町民もどうやって成り上がったのか不明だという。松下曰く、家作(=貸家)で収入を得たとの事だが、彼には怪しいうわさがあった。
早速、屋敷に忍び込む正義、直、衛。
正義と直は、貧乏夫婦と偽って松下の使用人となり、衛は屋根裏からの聴衆をする。
正義は着実に仕事をこなすが、直は家事で失敗ばかりで、正義にも叱責される。
遂には、大失敗をやらかして、責任を取る形で松下の夜伽をする破目になる。
ところが、正義と衛が駆けつける。証拠が見つかったのだ。
実は松下が手下が町民に借金の保証人になってもらうように頼み、担保で売られた店や家を松下が買収していたのだ。
更に調べた結果、米原以外の人間からも金を騙し取っていた事が明らかになる。そこで、他の隊員が署名を集めて、それを松下の前に突き出した。
松下は、詐欺に使った金は全て使い切っており、返す金はないと言うが、それで仕方ないと流す程、彼らは甘くなかった。
松下は全財産を売り払い、それでも足りない分は、全額返済するまで、北海道に送り込まれて、過酷な労働をする破目になった。
その後、無事に店を取り返した米原に、これから少しずつ頑張れば良いと、励ます正義だった。
ちなみに、直は今回失敗した事から正義と希望から、料理を習う事に。

森羅寺の庭
寺で寛心(作務衣を着用)と一緒に庭掃除する直。
直「…全く、森羅寺の庭掃除の手伝いを押し付けられる事になるなんて…」
寛心「ごめんね。普段は、青瀬さんと一緒にやってるんだけど、あの人も今日は他の仕事があるみたいだから」
直「い、いえ…。ところで、寛心さんは、1人でこの寺をやっているのか?」
寛心「そうだね、本当は和尚さんと2人なんだけど、あの人は普段貧しい人を助ける為に日本各地を旅をしていて、ほとんど帰ってこないから、実質僕が管理しているようなものだね」
直「そうなのか。その和尚さんって、一体どんな人なんだ?」
寛心「あの人は、とても優しい人だよ。僕が子供の頃、流行病で家族を亡くした時に今の和尚さんが僕を拾ってくれたんだ」
寛心の回想:流行病で家族が死んだ中、和尚が幼い寛心を拾う。
寛心「和尚さんは、僕を実の子の様に、大切に育ててくれたんだ。もし、あの時、和尚さんが僕を拾ってくれなかったら、死んでいただろうね」
直「そっか…」
寛心「と、ところで、桜庭さん」
直「なんだ?」
寛心「(顔を赤らめながら)も、もし、よろしかったら…ここ、今度、一緒にお、お、お…」
直「お?」
寛心「お、お…おちゃちゃ…」
その時、正義と智ら隊員達がやって来る。
正義「よう、お前らもう掃除は済んだか?」
直「(正義に気づき)あっ、あぁ」
直、正義の元に駆けよる。
寛心、突然の邪魔が入って、がっくりする。
 
森羅寺内
寺の中で、隊員達が一斉に輪を囲んでいる。
正義「急な用事でわざわざ来てもらって済まない。でも、今回はどうしても大事になりそうな依頼が来たから、今回皆に集まってもらうことにした。今回の依頼主は、米原秋人。商人だ」
 
回想開始
万屋『導光』客室
米原「私は、庄屋を営んでいました。店は、大繁盛とまではいきませんでしたが、近所の方々からは大変親しまれていました。ですが、ある日……」
 
米原の回想場面
米原の家に、松下が訪れる。
松下「米原さん、どうか頼みたい事があるんです」
米原(独白)「最近、毎日店にやってくるようになった田島という男が、深刻な顔で私の店にやって来ました」
松下(土下座して)「実は、僕が経営している会社が深刻な赤字になっているんです……もし、会社が倒産したら、私は路頭に迷う破目になってしまいます。お願いです、どうか私の保証人になってください!!」
米原(独白)「私は情にほだされて、そのまま田島の保証人になってしまったのです。ですが、ある日……」
金貸し屋が、突如店に押しかけて来て、店は競売にかけられる。 
米原の回想終了

米原「それから私は田島を探したのですが、誰も彼の行方を知る者はいませんでした。その時、私は気付いたんです。私は田島に利用されたのだと……」
正義「なるほどねぇ、ソイツは気の毒だな」
米原「お願いです! 店を、財産を、田島から取り返して欲しいのです! このままでは、私はご先祖様に顔向けできません!」
正義「分かった、承知した」
 
回想終了
 
正義「てな事があった訳よ。つー訳で今回はその田島という男を捕まえて、米原の財産を取り戻す事だ。どうだ?高志。田島っていう男について何か情報はあるか?」
高志「うーん、その田島って奴はあまり聞いたことはないが、1つ思い当たりはある」
正義「えっ。それ本当か?」
高志「松下健二」
直「松下健二? 誰なんだ、その人は?」
高志「松下健二は、最近になって東京に突如現れた成金の資産家でさ。金遣いが荒くて、仕事もせずに、女遊びに興じている高等遊民だよ。何でも家作(=貸家のこと)で儲けているらしいが、実は借金が返せなくなって差し押さえになった店や家を松下が買い取って、自分の物にしているらしい。田島は、多分松下の手下だろう。松下の家は、ここから少し遠い所にあるけど、きっとそこに何か関係がある筈だ」
正義「なるほど。よし、分かった。今から隊を2つに分ける。俺と直、衛は、松下の屋敷に忍び込む。あとの皆は、町の人から松下に関する情報を聞き出してくれ」
直「わ、私も忍び込むのか?」
正義「だって、もしかしたら、松下以外の男子禁制っていう場所があるかもしれないだろ?希望の場合、女好きな松下のことだから、希望が働いている遊郭にやって来る可能性があるしな。上手くいけば、そこで貴重な証拠が取れるかもしれない」
直「そ、それで私が行くという訳か?」
直「そっ!それじゃあ、それぞれの任務をこなす様に良いな」
直以外の隊員「了解!」
直「(しどろもどろに)りょ、了解……」
 
松下の屋敷・玄関前
松下の屋敷(洋風の立派な屋敷)の前に立つ正義、直。
正義「うひゃー、噂通りでっけー屋敷だなー」
直「そうだな…ところで、佐伯さんは?」
正義「あぁ、衛ならもう別の所からこっそり忍び込んでると思うぜ」
 
松下の屋敷・屋根裏
衛「(小声で)もう侵入してまーす」
 
松下の屋敷
直「それで、私達はどうやって忍び込むんだ?」
正義「そりゃあ……」
 
松下の屋敷・玄関
チャイムを鳴らすと、扉が開き、松下と執事が出る。
松下「ん、お前ら誰?」
そこには、貧乏人に変装した正義と直。
正義「お願いです、(土下座して)ここで働かせてください!!」
執事「えぇっ?!」
正義「実は、私は3ヶ月前に職を失いまして、新しい職にも就けず、ここにいる私の妻・直と共に、今は食べる物も無く、貧しい生活を強いられております」
執事「はぁ……」
正義「そんな時、松下様の噂を耳にして、仏の様に慈悲深い松下様の元で、是非働かせてもらいたいのです!!」
執事「どうしますか?」
松下、少し考えた後、ニヤリと笑みを浮かべ
松下「(紳士的な口調になって)分かりました。貴方達を雇い入れましょう。どうぞ、こちらへ」
松下、2人を案内する。以後、2人は小声で話す。
直「なぁ、これで良いのか?」
正義「良いんだよ。使用人として雇ってもらえば、怪しまれることはないだろう。ところで、お前家事は出来るか?」
直「か、かじ?」
正義「使用人として働くんだから、それくらい出来ないとマズイだろ。つーか、女の子なら料理や洗濯とかやった事あるだろ? それとも、お前まさか出来ないのか?」
直「(ムキになって)そ、そんな事はない。家事なら母親から少しは習ったからな」
正義「そうか。それなら問題無さそうだな」
直「うぅぅ……(不安)」
 
廊下、使用人(正義がフットマン、直がメイド)の服に着替えた2人。執事が他の使用人達に、正義、直を紹介する。
執事「今日からこの屋敷で働く事になった、望月正義さんと望月直さんです。大変でしょうけど、頑張ってください」
正義、直「はい」
モップで廊下を拭き始める2人。
正義は難なくこなすが、直はどうも上手くこなせない模様。
正義「おい、直。拭いた所がビショビショだけど、大丈夫か?」
直「仕方ないだろ。モップなんて、初めて使ったから……」
正義「おい、それってまずくないか?」
直「だ、大丈夫だ。すぐに使いこなせ……」
直、濡れた床で足を滑らせる。
直「う、うわああっ!!」
直、転倒した上に足でバケツを倒してしまい、床は水浸しになってしまう。
正義「だ、大丈夫か?」
直「イタタタタ……」
 
台所
執事「それじゃあ、次は料理をお願いしましょうか?まずは、魚を捌いてください」
正義「よっしゃ、それじゃあ俺に任せて」
正義、魚を綺麗に三枚おろしにして、魚の切り身を切って、見事に刺身を完成させた。
正義「はい、出来ました!」
執事「わぁ、よく出来ましたね。(直に向かって)直さんには、野菜を切ってもらいましょうか?」
直「うっ……」
直、恐る恐る包丁で野菜を切るが、指を切ってしまう。
直「痛っ!」
そして、何とか野菜を切り終えるが
直「……で、出来ました」
執事が直が切った野菜を見ると、野菜はぐちゃぐちゃになっていた。
 
廊下前
正義「おいおい、お前家事全然ダメじゃねぇか」
直「うるさい!そういうお前は、男の癖に何で掃除や料理が出来るんだ?」
正義「あぁ。俺は、今まで色んな仕事をしてきたからな。これくらいの事は楽勝さ。つーか、出来無いなら出来無いって最初に言えば良いのに。これじゃあ、松下の情報を聞き出せないまま、クビになるぞ」
直「くーっ!(悔しそうに唇を噛む)」
 
夜、使用人部屋・寝室
直、ベッドに倒れこむ。
直「ふー、疲れた」
 
女給「お疲れ様」
女給、直にコップの入ったお水を差し出す。
直「あ、ありがとうございます」
直、お水をありがたく受け取って飲む。
女給「慣れない仕事で大変だろうけど、早く仕事を覚えないとダメだよ」
直「(しょんぼりと)はい……。ところで、旦那様の事についてお聞きしたいことがあるんですけど」
女給「えっ?」
直「実は、街であの人の悪い噂が流れていて……」
女給「そうねぇ、確かに、あの人は金遣いが荒いし、女癖も悪いし、中には暴力を受けたり夜伽の相手をさせられたりした子もいるからね、大変だよ」
直「そうですか……」
女給「給料も安いし、食事も満足に与えてくれない……でも、ここにいる人達は、借金を抱えていたり、家族を養ったりするのに必死だから、誰もここから逃げられないのよ。仮に逃げ出せたとしても、他に行く宛や生活の糧が無いんだよ……」
直「……」
 
松下の部屋
松下「で、どうなんだい?新しく入った使用人は?」
執事「はっ、望月正義は問題ありませんが、妻・直の方は……はぁ(溜息)」
松下「ふーん……まぁいいや。女ならいざとなれば夜伽の相手くらいは出来るからな。ところで、金の方はどうだ?」
執事「ハッ、お金は今でも配下が順調に集めております」
松下「そうかそうか、それなら良いんだ。ちょっとずつ近付いて、ある程度親しくなったら、泣き落としをして頼み込めば、皆簡単に金を貸してくれるからな」
執事「しかも、使用人の中には借金を抱えている者も多いです。ちょっと名前を使わせてもらうだけで、別に騙した事にはなりませんからね」
松下「そうそう。何事もココ(頭を指差して)が肝心だね。この調子で、いつかは東京中の金を僕のモノに…フフフフフフ……」
 
屋根裏から、松下と執事の話を聞き出す衛。
 
夜、裏玄関
今回集まった情報を整理する正義、直、衛、智。
正義「という訳で、今回集まった情報をそれぞれ言うとしよう。まず智から」
智「うん。僕らが集めた話だと、依頼主の米原さんの他にも、お金を騙し取られた人が沢山いたよ。中には、家を失くした人や夜逃げした人もいるみたい……それと、『雅』にも松下が来たそうだよ」
直「すまん、『雅』って何だ?」
正義「あぁ、希望が働いている遊郭のことだよ」
 
回想開始
『雅』店内
松下「(泥酔状態で)いや~、誉(希望の源氏名)って言うんだっけ? 君って、そこらの女の子と比べて美人だね」
希望「ありがとうございます。ところで旦那様、最近急速に成り上がったと評判だけど、どうやってそんな大金を手に入れたの?」
松下「そりゃ決まってんだろ~? まずは…ムグッ!」
執事、慌てて松下の口を塞ぐ。
執事「すみません、ウチの旦那様は酒に酔うと譫言を語る悪癖がありまして」
希望「大丈夫、それくらい聞き流してあげるから」
松下「おい、人の話を邪魔すんなよ~! ヒック」
執事「しかし、旦那様…」
松下「そういや、お前まだ酒飲んでいなかっただろ。お前も一杯どうだ」
執事「いえいえ、私は酒は一滴も飲めませんので」
松下「貴様、主人の酒が飲めねぇって言うのかよ!」
希望「そうだよ、ここはお酒を飲む所だよ。酒が飲めないなら、帰った帰った」
執事「ううう…」
執事、仕方なく酒を一口飲むが、すぐに悪酔いしてそのまま倒れてしまった。
希望「アラアラ、一口飲んだだけで酔い潰れちゃうなんて、しょうがない男だねぇ。ところで、旦那様さっきの話の続きなんだけれど…」
回想終了
 
智「なんて事があったんだって」
正義「へぇー。幾ら証拠を聞き出す為とは言え、希望もおっかねぇことやるな。次、衛」
衛「俺が聞いた情報だと、松下の手下が借金を抱えた使用人の名前を騙って、町の人に借金の保証人になる様に頼んでいたんだ。そして、保証人が借金が返せなくなって、店や家を売り払われた時に、松下がソイツの物件を買い取っているんだって」
正義「へぇ、じゃあ米原が出会った田島という男は、松下の手下であって、全ては松下による策略だったという事か。直、お前は何か情報は聞き出せたか?」
直「あっ、あぁ、女給達から聞いたのだが、彼女達の間でも松下の素行の悪さは評判の様だ。賃金も悪くて結構苦労していて、中には暴力を受けたり夜伽の相手をさせられたりした人もいるそうだけど、彼女達も借金や生活の事もあって逆らえないそうだ」
正義「そうか、そいつは大変だな。分かった、そいつらも助けよう」
直「でも、どうやって証拠を探すんだ?」
正義「(片手で頭を抱える)まぁ、証言や状況証拠は出たけど、決定打になるものが無いんだよな。(頭から手を外す)よし、衛と智達は、何とか松下の手下を探し出してくれ」
衛「分かった」
正義「俺と直は、そのまま使用人を続ける。もし、向こうが手下を見つけ出したら、松下を始末する」
 
翌朝
 
松下邸宅内・廊下
使用人達が、掃除をしている。その時、松下と執事がやって来る。
松下「よーし、皆きちんと掃除してるかー?」
その時、美術品の壺を運んでいた直が、足を挫く。
直「うわあああっ!」
直、転倒。壺が割れてしまい、周囲は騒然とする。
松下「あああっ!お前、何てことをしてくれたんだよ!」
直「す、すみません!」
松下「ったく、ここに来てからお前はいっつも、失敗ばかりだな…(その時、何かを思いついて)そうだ、お前にはちょっとシツケをしてやらないとな(ニヤリ)」
直「えっ…?」
 
女給(昨日、直に話しかけた女給)・田島が仕事に向かっている。
正義「田島さん」
田島、後ろを振り返る。
田島「あぁ、望月さん」
正義「貴方にちょっとお話したい事があるんです」
 
使用人部屋
田島「あの、何のお話ですか?」
正義「実は、松下の手下が、貴方の名前を騙って、町の人に借金の保証人になってもらうように頼み込んでいるという噂があるんですよ」
田島「えぇっ?!」
正義「シッ、静かに。しかも、その保証人に、家や店を担保にさせて、差し押さえているのです。その後、それを松下自らが買い取っているのです」
田島「そ、そんな…」
正義「どうしますか?このままでは、新たに犠牲となる者が増える一方です。貴方がこの事を他の使用人に伝え、一致団結すれば、松下を懲らしめる事が出来ます」
田島「そんな…無理ですよ」
正義「どうして?」
田島「ここにいる人達は、みな借金を抱えている人や、生活や家族の為に必死になって生きている人達ばかりなんです。(途中、涙を流しながら)私も主人が亡くなってから、職を転々として、やっと辿り着いたというのに……たとえ、どんなに酷い目に遭っても、生きる為に必死で頑張ってきたんです。もし、ここから逃げたら、もう生きる糧も行く宛もないのに……また路頭に迷えと言うのですか?」
正義「何で、そんなに悲観してんの?」
田島「えっ?」
正義「(グイッと顔を近付けて)可能性というものはだな、ほんのちょっと見渡せば、どこにでも転がってるモンなんだぜ。今のお前は、『行く宛が無いとか』とか『自分にはダメだ』とか言ってるけど、それは自ら可能性をドブに捨てているだけだ。それに、このままだとお前は一生アイツに利用されるだけだぜ。お前はこのまま一生を終えても良いのか?お前はそれで幸せだと胸を張って言えるのか?!」
田島「……」
 
街で、衛と智が松下の手下を探している。
衛「しっかし、田島の名前が偽名だと分かったけど、顔はよく分からないんだよな。智「確か、年齢は30代くらい。きちんとした身なりで、いかにも人が良さそうな人…とは言ってたけど、それだけだと、情報が少ないね…」
衛「手下も1人だけじゃ無さそうだし、被害に遭った人から、もっと情報を聞き出さないと…」
 
?「見つけたぞ、この詐欺師ー!!」
智、衛「?!」
声のした方を向くと、血の涙を流した男が紳士(実は、米原の時に、田島の偽名を使っていた男性)の胸ぐらをつかんでいる。
男「お前のせいで、お前のせいで、俺は、俺は、家を失う破目になったんだぞー!!」
紳士「ちょ、ちょっと、何なんですか、貴方は?」
男「しらばっくれてんじゃねぇー!!(短刀を出して)今ここでお前をぶっ殺してやるー!!」
智と衛、男と紳士の元に駆け寄って、男を止める。
智「ちょっと、街中で何をやってるんですか?」
男「離せー!コイツは、俺を借金の保証人にした後、勝手に行方をくらませやがったんだー!!」
智、衛「?!」
 
夜、松下の部屋
直(遂に、来てしまったけれど、何だか嫌な予感がするな……よし!)
恐る恐る部屋に入る直。そこには、松下と執事がいた。
松下「フフフ…ちゃんと来てくれたんだね」
直「あの、ご要件は何でしょうか?」
松下「決まってるじゃないか。君には、今日割った壺の弁償を支払ってもらうんだよ」
直「べ、弁償……?」
執事「壺を割ったのですから、当然でしょう。と言っても、貴方の様な貧乏人に、壺を弁償する程の金はないですからね。そこで旦那様は考えたのですよ」
直「……何を?」
松下、直に近づき
松下「体で支払ってもらうんだよ」
松下、直の顔に触れるが、直は松下の頬をピシッ!と平手打ちする。松下、打たれた頬を手に当てて、怒りで震える。
松下「……貴様、仕事もロクに出来ねぇ使用人の分際で、よくも!」
松下、直に殴りかかろうとする。直は避ける。直は、そこから逃げようとするが、執事に片腕を掴まれる。直は腕を離せとばかりに掴まれた腕を引っ張ろうとするが、もう片腕も掴まれて、床に押し倒される。
松下「ったく、手間を取らせやがって。君には反省というものが無いのか?」
松下、直に近付き、足で直の頭を踏みつける。
松下「こんな生意気な奴に、この屋敷にいてもらっては困るな。今ここで始末してやる」
直が、「もうダメだ」と目を閉じた瞬間、正義(普段着に着替えている)が扉をバーン!と開ける。
正義「おい、俺の嫁に何、手ェ出してんだ?」
直「正義!」
松下「望月、仕事はどうしたんだ?」
正義、「ほらよ」と、刀を投げ、直はそれを受け取り、直はその隙に松下から正義の下に付く。
松下「あぁっ!」
正義「自作自演で金を巻き上げ、町民を苦しめ、更に使用人達をも虐げる。お前らの所業、この導光隊が成敗する!」
執事「導光隊?…(正義を指差して)あぁっ!」
松下「何だ?アイツを知ってるのか?」
執事「導光隊と言いますのは、深崎で暗殺や盗みを行っていると噂されている犯罪者どもですよ!」
正義「おい、犯罪者とは、失礼だな。俺達はお前らの様な悪党を成敗する為に結成した世直し集団だ。今回、お前を退治して欲しいという依頼があったのでな。お前の使用人として潜入してたんだよ」
松下「な、何だって?!」
正義「それに、お前を退治するのは、俺達導光隊だけじゃないぜ」
正義が手を招くと、他の隊員がモップを持った使用人(頭に、打倒・松下と書かれた鉢巻付き)がやって来る。
松下「な、何―――!?」
正義「こいつら、どうやらお前に対してよーっぽど酷い扱いを受けていたみたいでな。お前に仕返しする気満々だわ」
松下「ちょ、ちょっと、僕が何をしたって言うんだよ。そ、それに僕を悪党呼ばわりするなんて、しょ、証拠でもあるのかよ!?」
希望の声「証拠なら、あるわよ」
希望が登場。
松下「あぁっ、お前は!」
希望「うふふ、お酒に酔った勢いで、よくもまぁ簡単にお話してくれたわね。何なら、お店で旦那様が言った事、全部ここでお話しましょうか?」
松下「あ、あれは、全部譫言だよ!そ、その酔った勢いってやつで」
正義「ほう、あくまで白を切る気か。何ならもっと凄い証拠を見せてやろうか?」
衛、縄で縛られた松下の手下(全員ボコボコにされている)を連れてくる。
衛「こいつらが、お前らの悪事を全部吐いちまったぜ」
松下「(怒って)お、お前らーっ!」
正義「さて、どうする?大人しく使用人を全員解放して、奪った物は全部返すか?それとも、この場で袋叩きにされるか?」
松下「…くうーっ! (用心棒を呼ぶ)誰かー、侵入者だー!」
使用人の背後から護衛役の用心棒達が現れる。
松下「お前ら、こいつら全員始末しろ!」
護衛、隊員と使用人に襲い掛かる。
正義「チッ、しょうがねぇな」
正義、刀を抜く。
正義、弧を描くように、敵を斬り付ける。
衛も槍で敵を攻撃する(急所は外す)。
勇気、護衛と戦っている。その最中、壁が壊れる。
勇気、護衛「うわっ!」
勇気と護衛を壁の下敷きになってしまった。そして、抜けた壁の向こうには拓がいた(拓が壁を破壊していた)。
希望は、関節技で護衛を倒していくが、途中で護衛に囲まれてしまう。しかし、袖に隠した簪を投げ飛ばして、護衛の首や腕に刺さり、全員倒れこむ。
女給がモップで護衛と張り合い、押し倒されそうになるが、突如銃声が鳴って、護衛が倒れる。智が銃で応戦していたのだ。ところが、今度は彼の背後から護衛が刀で斬りつけようとする。そこへ、寛心が杖で護衛を突いて気絶させる。
護衛達から逃げる宰造。からくり箱のボタンを押すと、箱から煙が出て来る。
護衛達「な、何だ?何か眠くなってき…」
宰造を追っていた護衛達は煙を吸って、バタッと倒れ、全員眠ってしまった。
直、刀を抜いて執事と戦うが、執事は刀をかわし、直に殴りかかる。
直、ギリギリの所でかわすが、苦戦している。
直「くっ、この服では戦いづらいな…(何かを閃き)そうだ!」
直、刀で着物とエプロンをビリッ!と破き(足が見える範囲で)、破いた布の切れ端を執事の顔に投げつける。
執事「うわっ!」
直、執事が怯んだ隙に、執事を峰打ちにして倒す。
護衛と執事は、全員倒された。
 
松下、愕然とする。
正義「(松下に近寄り)さぁ、観念して使用人を全員解放して、騙し取った物件や金を全て返せ。もし、それが出来ないなら…」
正義に刀を向けられて松下は真っ青になって土下座。
松下「悪かった!使用人は、全員解放する!家や店も全て返す!でも、お金の方は…」
正義「ほぅ、どうして?」
松下「お金は、もうほとんど全部使い切ってしまっているんだ。だから、返したくても返せないんだよ!」
正義「何?」
松下「本当だ! 返す金が無ければ、返す必要は無いんだよな? だから、もうどうしようもないんだ!」
正義「そっかー、それなら仕方ないな……」
松下が、安堵した表情を浮かべるが。
正義「(松下に顔を近付けて)なーんて、言うとでも思ってるの?」※カメラ目線の方が良いかも。
 
数日後、米原の庄屋を訪問しに来た正義、智。
正義「米原、いるかー?」
正義が呼ぶと、店から米原が出てきた。
米原「あぁ、この前の。貴方達のおかげで、無事店が戻りました。ありがとうございます」
米原、お辞儀をする。
正義「良いってことよ。松下が店や財産を全て売り払ったおかげで、何とか店を続けられるだけの財産は取り戻せたな。まぁ、残りは北海道で出稼ぎして返してもらうって事で話は付いたから」
 
北海道
上官にこき使われながら、炭鉱を掘る松下。
上官「さぁ、きびきび働け!」
松下「ひーっ!!」
 
智「これで、あの人も懲りると思うよ……」
正義「まぁ、一度財産は失っちまったけど、後はゆっくりと頑張れば良いさ。じゃあな、もう怪しい話に首突っ込むなよ」
正義と智、米原に手を振って去る。
 
『導光』
正義と智が店に戻る。
正義「どうだ?ちょっとは上手くなったか?」
 
向こうの台所で、希望が直に料理を教えている。
希望「ホラ、もっと左手の指を立てて」
直「こ、こうか?」
希望「そうじゃなくって、もっとこう…」
 
智「今回の事がきっかけで、花嫁修行をする事になったんだね…」
正義「希望は料理上手だからな。女の子同士だし、教えてもらうにはちょうど良い相手だろう(直に向かって)おい、今のままだと嫁の貰い手が現れねぇぞ。これを機にちょっとは上達しろよな」
直「(正義に向かって)うるさい!」
希望「ホラ、手を休まない!」
直「あ、はい」

希望に叱られる直を見て、クスクスと笑う正義と智。