しばらくすると、ラフィンシアを飲み込んだ炎は消え、彼女は祭壇の上にへたりと座り込んだ。

『まさか・・・・・・そんな力を持った人間が、まだこの世界に居たなんてね・・・・・・』

ラフィンシアは悔しそうだが、僅かながら嬉しそうだった。
どこか、吹っ切れたようにも見える。

『ここ何百年、ほとんど実力が無い人間が私達を求めてきた。この家の主人も同じだったわ。
私達レキサドラは、タリスより力を取り込める便利な媒介。
人間はそこまでして力が欲しいのかと思って、いい加減うんざりしていたんだけど・・・・・そこの属性使いを見たら、久しぶりに希望が持てたわ』

そう言い切ると、ラフィンシアはオレ達三人に笑いかけた。
先程までの、暗い部分を含んだ笑い方ではない。
彼女その場をはすくっと立ち上がり、再びレキサドラの側で漂い始める。

『仕方ないわね・・・・・・私は、貴方に負けた。約束通り、元あるべき姿に戻るわ。
転生石は、持ってるんでしょ?』

後ろを振り返ってみると、ノアが小さく頷き、上着の中から丁寧に包まれた掌よりやや大きな袋を取り出し、その中身を出す。
中に入っていたのは、歪な形の濁った色の石だった。
転生石っていう名前から、大層なものかと思っていたけど・・・・・・意外だな。
その石を確認すると、ラフィンシアは小さく頷いた。

「では、元あるべき姿に・・・・・・戻りなさい」

ノアが小さく呟くと、持っていた石が僅かに光りだす。
すると、それに呼応してラフィンシアとレキサドラも空色の光を放ち出した。
そして、最初に祭壇の上にあるレキサドラの形が崩れ始め、少しずつノアの持っている石に取り込まれていく。
それに続き、ラフィンシアの姿が徐々に薄らいでいった。
これは、ほんの数秒の出来事。
レキサドラとラフィンシアはあっという間に祭壇の上から消えてしまった。
そして、レキサドラへと逆流していた水は、重力に従い再び地面へと流れ始める。
レキサドラと煌霊の姿が完全に消えたのを確認すると、ノアは小さく息を吐き、力が抜けて強張った両肩が下がった。

「・・・・・・上手くいったのか?」

イルーファが尋ねると、ノアは小さく頷いた。

「ええ、成功です。次は、クレイと合流して・・・・・・」

ノアは一旦言葉を切り、この部屋に唯一ある扉の方へ身体を向ける。
誰かが来たのだろうか・・・・・・。
すると、突然その扉が開け放たれた。オレとイルーファはいつでも攻撃を行えるように備えた。
だが、そこに現れたのは、警備兵ではなかった。
見覚えのある白銀のボサボサ髪に、薄氷色の瞳の盗賊。

「おっ、その様子だと、上手くいったみたいだな」
「ええ、二人のお陰で何とか回収できましたよ」
「そうか。手伝ってくれてありがとな」

クレイは初対面の時と同じような緩い口調でオレ達に笑いかけた。

「レキサドラも回収できたし、オレもお前らと合流できた。
あとは、ここから脱出するだけ・・・・・・」

先程と同じような形で、クレイは開け放たれたままの扉の方を見る。
オレとイルーファもそっちを見ていると、少し経ってから、遠くからドタドタと大人数の足音が聞こえてきた。

「あーあ、さっき撹乱させた奴らだな。
あの中には、この家の主人がいて、面倒だったんだよ・・・・・・」

クレイの説明を聞いて、ノアは右手を顎に添えて小さく首を傾げて何やら考えていたが、思考していた時間は短く、すぐにいつもの善人の様な眩しい笑顔になる。

「ああ、あの方々がここに来ても、もう大丈夫でしょう。
こうなることを予想して、一応手は打っています」

ノアは、何事もないように呑気に答えた。